2018年12月19日発売の星野源5thアルバム
『POP VIRUS』
フラゲして早速聴きました…はああん。
今回「ホア〜〜〜」とか「ヒエ〜〜〜」とか「アッ…あああ〜〜〜〜」とかいう感想しか書けそうにないんですが
— にのうでプニ子@はてなブログ (@ninoude_punico) 2018年12月18日
聴きながら「こんなの感想かけないよお…」と弱音を吐きまくりだった…それくらい私の中にないもので出来上がった星野源をドバアアァ〜〜!と浴びせられるようなアルバムでした。(でも気づいたら6000字越えてた)
以下、全曲感想です。
過去に感想を書いているシングル類については記事リンクを貼っているのでよかったらそちらも覗いてみてね。
01:POP VIRUS
まずもう、なんじゃこりゃと思いました。
0:00秒、息を吸い込む音。これだけでもう他とは違う緊張感、予感。続いて弾き語りになったかと思えば突然のノイズ、ガラスの割れる音、コーラス、それらが合わさって音になり始めたかと思ったら「え、終わり!?」という落としからのドーーン!!!
聴きなれないものばかりです。聴きなれない音、聴きなれない言葉たち、組み合わせ。なのに「これが…音楽だ…」という気持ちになっている自分がいる。
「始まりは 炎や棒切れじゃなく 音楽だった」
これが全て。ノイズや生活音なんかが全て音で、音楽であると。
アルバムタイトルでもある、「POP」と「VIRUS」という明暗を組み合わせた言葉のように、明るさとダークさが混ざり合って「なんかいい感じ」になっている実験みたいな曲だなと思いました。
本来不快感を与えるマイナスなものをスパイスとして使い、遊んでいるような感じ。楽しい実験。
そしてこの曲で特筆すべきは今まで使わずにいた「愛している」という言葉を使っていること。これに関しては7曲目の「Dead Leaf」で書きます。
関係ないですが今回曲を通して「VIRUS」を一度脳内で変換させずに読めるようになりました。ありがとうございます。
02:恋
TVでも街中でも一年中聴きすぎて、もはや自分のiPhoneからは流れないようにしていた位だったのですが、約1年ぶりにイヤホンから聞こえたイントロにホッとする自分がいました。
なにこの名曲…! こりゃ売れるわ…!!w
www.ninoude-punico.comこの曲も発売当時は「恋」なんてタイトルに使うんだと驚いたものですが(今でも何故かドギマギする気持ちはあるけど) このアルバムに入ると浮いた感じがしなくて星野源の音楽史の変化をひしひし感じます。
03:Get a Feel
どこか懐かしい。70年代アメリカンのような雰囲気と星野源のふざけた音遊びとで自然と体が揺れます。
「ああどんな肌の色でも」の落とし方が好き。
星野源の曲たちは(彼が浴びてきた様々な時代・国の)色々な音が混ざり合っていて、でもそれがこっちが恥ずかしくなるような外国かぶれの薄っぺら聞こえないのは彼独自の解釈と日本らしさがきちんと落とし込まれてるからなんだよなあと。
「憂鬱を叩き潰した毎日」にも「優しさを交わし続けた毎日」にも側に「何か居て」って感覚めっちゃくちゃ分かりすぎて。でも分かるなって思うのってこうして言葉にされたからだなと思うんです。
肩こりって言葉を知らないから肩こりをしない外国人みたいな。違うか。
04:肌
うーーん好き。変わらず好き。
『Get a Feel』からの『肌』の流れも凄く良い。
とても星野源イズムな歌詞。発売当時の感想記事でも語ってるんですが、『触れ合うと言葉より君のことを知れる気がした』の「気がした」いうのが本当に好きなの。
君は僕の全てだ。君のこと何でも知ってるよ。そんな風に歌わない(歌えない)星野源が好きです。
www.ninoude-punico.com
05:Pair Dancer
これはやばいですよ奥さん。
イントロから星野源史上最もエロいと行っても過言ではない『Snow Man』 を思い起こされて反射的に「あ、これは絶対エロいやつ」と思った自分を恥じたい(いや恥じない)
「別つ事で気づく未熟は 繋ぎ直す 笑って」
「間違う隙間に 愛は流れてる」
うわああああ〜〜〜!!助けて〜〜〜〜!!!
この歌全体に愛が溢れすぎている。不器用で未完成かもしれないけれど愛が溢れまくっている…。
うわああたまんねえ…!
「生きると踊るは同意語」と語る星野源の書く「Pair Dancer」。「ダンサー」ではなく「Pair Dancer」。2人で踊るということは、2人で生きるという事。
恋ではなく滲み出るような愛。なんかもう泣けるほど愛おしくないですか。
どうやっても一つにはなれない"ばらばら"の人間同士だから生きていれば「間違う隙間」が生まれてしまう。でも違う形を踊りがながら繋合わせていくことことが愛なんだと。
この僕と君は揺らいでいるようできっと揺るがないんだろうな。
06:Present
ラブソングの多いアルバムの中での反骨ソング。
こういう曲があると無性に嬉しくなるのは何故でしょう。最近は個人的な内部をあまり曝け出さなくなったせいでしょうか。歌詞の精神的にはそれこそ初期の雰囲気を感じます。
生まれた時に渡された運命を「Present」と星野源が表現すると他の人が言うのと違う皮肉な響きがあって。
弦楽器の不穏な暗さから始まり、進むにつれて闇に光が差していく。槇原敬之の『太陽』を思い出しました。「雲が避けて」からの流れはとにかくズルい…!
こんなもんだよ仕方ないよとなだめる運命を「笑顔で踏み潰し」、「道のない道」運命で決まっていただけでない道を進み行く「君だけでない場所」。
この「君だけでない場所」というのが、あくまで運命に逆らっている訳ではなく共に生きて行く諦めのようなものも含んでいて、らしいなと思いました。
07:Dead Leaf
「心をそのまま伝える言の葉
見つからない いつまでも」
「ああ もっと似合った言葉がいいけど
一番近くて古い言葉」
「愛してる」と言う言葉を使わずに如何に「愛してる」を伝えるかが作詞家だと思っていて、そう言うことに気持ち悪いくらいに拘れる人が私は好きなんです。
そして今まで「愛してる」を苦手だと言っていた星野源がついにその言葉を解放したのがこのアルバムであり、『Pop Virus』であり『Dead Leaf』であり。
でもこの曲の「愛」が私の嫌いな「愛」と違うのは歌詞として使われていないからだなと思うんです。作詞家とか表現とかいう作品ではなくて、真に「相手」があっての伝えるという行為としての愛なんだなと。
アルバムのインタビューで「その言葉が欲しい人もいるし」と話しているのが凄く印象的だったんだけど、「愛してる」でしか伝えられないものもあるんですよね。
どんなに言葉を操れる人間であっても昔から世に死ぬほど溢れていて誰でも思いつく言葉でしか伝えられないこともある。伝えられない何かは一番近い言葉で伝える。
気持ちは言葉にして、歌にして伝えるのよという星野源らしくもあるし、新しい星野源でもあるし。
誰かへのリアルなラブソングでもあるし、この曲を通して私たちへこれからの自分を説明しているような象徴的な意思表示でもあるなと感じました。
確実に大きな変化だし、解放によってどう変わっていくのか正直不安でもあり楽しみです。
08:KIDS
『Family Song』のシングルの中で一度発表されているカップリング曲を再収録したもの。この曲が入ってくるのは凄く凄く意外でした…!
でもアルバムを知った後だとなんて納得のいく選曲なんだろうと思える。
シングルでは自宅収録(それでも恐ろしくクオリティの高すぎる自宅収録だけど)だったものが、こうしてアルバムに収録されるのは嬉しいですね。
09:Continues
発売時に結構語っているのでこちらをどうぞ。
10:サピエンス
音が面白すぎる。
「ああ 僕らは
いつまでも間違ったまま
世界を変えて走り出す
ふざけた愛しみを味わったまま
やめない意味は
いつの日も寂しさだ」
完璧で傷つかない機械のようにはなれず泥臭く生きている人間を愛する人。
「かなしみ」を「愛しみ」と書く人。
こういう所だよ、星野源の好かれる理由は。
11:アイデア
多分、この先もずっと新しく聴こえる曲だと思う。
これも発売時に感想を長文で書いているのでどうぞ…!
12:Family Song
これも『恋』と同じく耳に入ってきた瞬間ホッとした。
何が待っているんだろうとワクワクと共に思わず構えてしまうこのアルバムの中で、安心してどっぷり浸かれる曲でした。
「愛」を使わずして、ここまで広く深いラブソングはないんじゃないかと思う。
13:Nothing
星野源の書く「なにもない」はゼロとは違う。
相手の事を大切に思えば思うほど、尊く思えば思うほど。自分の中で大きくなればなるほど。寂しさや孤独を感じることってあるなあと。
でもそれは愛おしさ故だよね。
否定ではない。ゼロではない。
「布に篭った 残り香 君の吐息が
何も 持つことのできない手を 握った」
エロすぎる。いや、色気が過ぎる。
30後半になった星野源だからこそのラブソングだと感じました。
14:Hello Song
この曲で歌わずにいられる人っているんですかね?!
ハローハロー叫ばずにいられる人いるんですかね?私には無理だ!!
今を作るのは過去で、今生きる私たちの命が燃やした全てが未来に繋がる。それも偉人でもなんでもない人たちが繋いでいる。
テーマ的にはもうここ数年聞き飽きたよってくらいの星野イズムなんですよね。星野源総合曲。
なのにつまんねえわってならないのは、こう言う曲を期待しているからに過ぎないのかな。
『地獄でなぜ悪い』と彷彿とさせる軽快さもたまらないし、大口開けた歌い方もたまんない。
一度聞けば(と言うか一瞬でも聞けば)誰でも口ずさんでしまえる日本の歌謡曲であってそうじゃない。
シングルカットされていないのが不思議なくらいです。
あーもうだから星野源を嫌いになれないよ。
その他感想
アルバムとしての完成度が超絶高い
まずシングル『ドラえもん』が未収録な点について。
大人の事情なのかアルバムの趣向と違っていたからなのか分かりませんが、大手を振って賛成しかない。それこそこれまでのアルバムの中に入っていても違和感はなかっただろうけど、今回この曲が入っていたらきっとアルバムは一気に違うものになっていたと思います。
『ドラえもん』が嫌いなわけじゃないけれど、あまりにもシングルとして完結し過ぎているし星野源であって星野源でないなと感じる曲なので…
同時に何度も言うようだけど「愛」という大きなテーマに添ったアルバムになっている印象がとても強くて。
前回の『YELLO DANCER』でもそうであったように、今回は特に只のシングルまとめではなく作品としての一貫性が非常に強いように思いました。こう言う所にただただ音楽が好きという想いを感じるのです。
今の感情に正直に、という姿勢
SAKEROCK時代、歌うことに気恥ずかしさを感じていたという彼が細々と歌い始め今や国民的アーティストになっている。星野源は年々堂々とした姿勢で自分の好きに正直になっていて作品を通してそうした変化は強く感じられます。
今回は「愛」と言う言葉、そしてもう一つ英語のタイトルの圧倒的多さに驚きました。
昔の曲(それこそSAKEROCK時代)からちょこちょこあったものの、ソロの自分の曲では基本的に日本語ひとことで完結させていたのには、どこか気恥ずかしさがあったんじゃないかと勝手に思っていて。
年々広がっていく彼の音楽世界とそれを受け入れてくれる世間。そういったものを受けて、段々と「星野源」と言うものから彼自身が解放されて進んでいっているように感じます。
星野源に幸あれ
これはもう誰しも感じると思うんですよ、星野源の大切な人の存在を。
こんなアルバムのような嫌んなるほどの愛おしさを持てるなんて、いいなあ。
星野源に幸多からんことを…
私たちは完全に感染しているのだ
かつて私が学生だった10年ほど前、私が星野源を周りに(無理やり)聴かせると返ってくるのが「聞いたことないし、よくわからないからいいや」でした。
それが今では日本中が魅了されている。
それも星野源の作り出す「知らない」点に魅了されているのだ。
『恋』が社会現象になった時にも思ったことだけど、それまで聞いたことのないような彼の曲の新しさに日本中が驚き、慣れていく現象って本当に凄いなと思っていて。
だって知らない唯一無二だったからこそ新曲が出れば「あ、星野源だ」とわかるんだもの。大勝利だよ。
知らないメロディー、聞いたことのない音の組み合わせ、世界観。いろんな知らないを浴びさせられる新鮮なドキドキに完全に魅了されてしまっている。恋のようで魔力のようでドラッグみたいでもあって。
こんなポップなウイルスならいくらでも感染しちゃえばいいよ。
そして一度感染してしまった私たちは、きっともう次からも星野源をどうしようもなく求めてしまうのです。困ったね。
正直、このアルバムを聴くのはすごく怖かったんです。
ラジオで『Pop Virus』を先行で聞いた時、ああもう本当に遠くの届かない場所に行ってしまったんだと。私には彼の音楽はもうわかんないんだろうなと思いました。
それでも聴くことをやめられない。
そういう不安は必ず裏切られて、一瞬で喜びに変わってしまうのです。
もはや星野源を聴かないことは、日本の音楽を聴かないのと同じだと言ってもいいんじゃないかとすら思ってしまいます。
だってここには出会ったことのない面白いものが死ぬほど詰まってるんだもん。
星野源のキャッチフレーズは来年から「日本よ、これが音楽だ」にしましょ。
POP VIRUS (CD+Blu-ray+特製ブックレット)(初回限定盤A)(特典なし)
- アーティスト: 星野源
- 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
- 発売日: 2018/12/19
- メディア: CD
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