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映画『彼女がその名を知らない鳥たち』が傑作すぎて夕飯が喉を通らない【後半ネタバレあり】

2017年10月28日公開彼女がその名を知らない鳥たち

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観てきました、観てきました…が…

非常に参った。

映画館を出て今PCに向かうまで3時間は経つのですが、未だに感情が引きづられているのです。ふとした瞬間にシーンがフラッシュバックしてきては知らない感情が胸に込み上げてきて「ああっ」としゃがみ込みたくなっています。

完全にやられました。

普段使わない筋肉を使うと筋肉痛になるじゃないですか。そんな感じで今まであまり刺激されてこなかった感情を刺激されて胸が苦じい。

しかもその刺激を自分が世界で一番愛する俳優、阿部サダヲにされてしまったもんだからもうどうにかなりそうです。

 

とにかく多くの人にこの作品を見て胸を締め付けられて欲しい。

なので記事前半は内容にはできる限り触れずに主に阿部サダヲの役がえげつなかった」ことと松坂桃李が気持ち悪いほどエロかった」ことをお伝えできればと思います。

 

※後半でネタバレ含みます

 

あらすじと概要!


『彼女がその名を知らない鳥たち』予告編/シネマトクラス

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十和子(蒼井優)は15歳年上の陣治(阿部サダヲ)と同居しながらも、自分に暴力を振るってきた昔の恋人・黒崎(竹野内豊)の事を引きずっている。

十和子に「汚い・クズ・ゴミ」と貶され、触れることすら拒まれながらも「十和子のためなら俺はなんでもする」と笑い毎朝数千円をカゴに入れ仕事へ向かう陣治。

方陣治を嫌いながらもそのカゴの金に頼りダラダラ暮らす十和子。

そんな十和子は自分の時計の修理へのクレームをつけるべく電話した百貨店で、売り場責任者のイケメン・水島(松坂桃李)に出会う。

陣治の制止も聞かず水島との関係にどっぷりハマっていく十和子だが、ある日刑事によって黒崎が5年前に失踪していたと聞かされる。

黒崎はなぜ失踪したのか…?

十和子は陣治を疑い始めるが…

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原作は「ユリゴコロ」の沼田まほかる、脚本は「ラスト・フレンズ」「クローバー」の浅野妙子、監督は「凶悪」「日本で一番悪い奴ら」の白石和彌

ちなみにRー15作品です!

 

 

これだけは伝えたい! 二大クズ男のえげつなさ!

好感度俳優・阿部サダヲの真骨頂

この作品は蒼井優演じる十和子を中心に三人の男たちと共に物語が動いていくのですが、「共感度0%、不快度100%」のキャッチコピーに唸ってしまうくらい、登場人物がクズで情けなくいやつしか出てこなくて、死ぬほど嫌な気持ちにさせてくれます。

そんなクソ男たちの中で唯一、十和子を傷つけないのが阿部サダヲ演じる陣治。

予告の時点でひしひしと感じていましたが、本編中もうずっと叫びそうだった。

「こんなサダヲが見たかったんだ!」と…!

 

48歳、髪も髭もボサボサ。常に来てる作業着は汚いし手足の爪も汚れてる。

肌は日に焼けっぱなしでサダヲ史上最高に赤黒いし、肌着姿のTシャツ焼けも切ない。

おまけに食べ方は最高にうるさいし汚いし靴下くさそうだしもう男というか人間として良さそうな点が全く無い陣治。

 

でもラストまで見終えたなら、そんな陣治の表情やセリフを思い出すたびに胸が酷く締め付けられるのです。

観客のハートを容赦無くズブッズブ刺してくるのです…!!

 

誰もがとんでもねえなと思う様なえげつない役をここまでギャップや違和感を一切出さずに演じることで言ったら阿部サダヲの右に出る役者はまじでいないんじゃ無いでしょうか。

最近は好感度10位以内をキープしている阿部サダヲですが、もういいんですよ。

元気な頑張るパパとか可愛げのある姿とかマルマルモリモリとかいいんですよ。

私が好きになったのはこういう観客の感情を気持ち悪いほどに狂わせてくる彼なのです。ちょっと目眩がして吐きたくなるほどの演技なのです。久々にこういった役をスクリーンで見られたことにどうしようもなく神に感謝したくなりました。

 

個人的に一番やばかったのが、十和子の腰のマッサージをするシーン。

「不潔!やらしいことしてくんじゃねえ!」と猛烈拒絶してくる普段と違い、色っぽい声を出す十和子に優しく尋ねる、「今日したいんか?」から立ち去るまでの一連の流れ。 

今年のアカデミー賞は決まりだと思いました。

 

 

キスがエロすぎる松坂桃李

これは本当に衝撃的だった…

これだとエロいがただの褒め言葉みたいなんですが、実際はもっと気持ち悪いエロさというか、癖がすげえ!!

例えば予告でも使われてるのですが、この水島という男、キスする際に「『あーっ』って言って」とか言い出すんですね。それがもう!!なんなのあれ?!どんな性癖なの?!!

 

全国の桃李ファンへお伝えしておくと、今回の松坂桃李は本当によく脱ぎます。

R-15指定だし、監督は日活ロマンポルノのリブートを撮っているそうだしある程度のベッドシーンがあるのは想像していたけれど、想像以上に傑作すぎました。

絶妙な見せ方と隠し具合。舐めるようなカメラワーク。4DXで観せてくれ!!!(暴論)

映画のキスシーンであんなに「うえええええ??」って思ったの初めてですw

 

そして今回の松坂桃李はエロいだけじゃない。

この映画の3大クズ男として、サダヲの陣治が「食べ方が下品で汚い男」だとしたら、竹野内豊の黒崎は「女を利用する暴力男」、そして松坂桃李の水島が「下半身でしか動かないペラペラ男」という役所

そう。ただのクズ男なのです。

 

まず十和子と水島のくっつき方が常人には理解不能。

十和子が時計のクレームをつけ駄々をこねまくった結果、家まで代わりの商品を売り場責任者の水島が持参してくるところから出会いが始まるのですが、もうこれが「なんじゃそりゃ意味わかんねええええええ!!!!」と発狂しそうになります。

しかしそれと同時になぜか「こういうのもありか…」と井の頭のゴローさん並みの納得してしまう私。

これが下半身男の魔力なのか…!

 

初めは百貨店店員っぽく紳士で清潔感ある雰囲気を出しながら、徐々に十和子を我が物にしていく姿がたまらなく最低でした。

 

最低な役ってイケメンであればあるほど難しいはずで、どうしても「イケメンなのにこんな体張ってるよ」なんて“イケメンなのにフィルター”がかかってしまいがちなんですが(そして私はそれが大嫌いなのですが)、

すっげえよ松坂桃李

クズにしか見えなかったよ…!

えげつないキスもそうだしパンツの脱ぎっぷりもそうだし、普段岡田将生と一緒に「女優と付き合えたらどうするか」トークでキャッキャしてるらしい人物とはとても思えませんでした。

 一気にファンになったと同時に何だか気まずくてこれから先しばらくは直視できなそうです。

 

『かの鳥』の「愛」とはなんなのか

最後に少しだけまともに感想を…

 

「このラストは、あなたの恋愛観を変える」

これは「共感度0%、不快度100%」と共につけられたキャッチコピーです。

 

キャッチコピーなんて大げさだし「感動」やら「愛」やらに溢れすぎて、普段はほとんど気にしません。

でも今回は映画を見終わった後に改めてこの言葉を見て、ドキッとさせられました。

その後から夕ご飯が喉を通らなかった。

恋愛観が変わったと言うか、今まで自分が「愛」と思っていたものがちょっと分からなくなってしまいました。

 

繰り返すようですが、十和子はまるで救いようの無い様なダメ女です。

物語冒頭、「大事な時計が壊れた」と百貨店へクレーム電話をつける姿から始まり、その足でレンタルビデオ店へ向かい「DVDが途中で止まんねん、どうしてくれんの?」「交換とかじゃないんよ、これを途中まで見た私の時間返してくれる訳?」とまたアホほど対応のしにくいクレームをつける。

映画開始から10分程度で「あ、こいつヤベー女だわ」という嫌悪感をがっつり持たせた上で、更に「健気な陣治への容赦ない罵り」や「過去の男を引きずるダメ女っぷり」や「松坂桃李へのイケメンほいほいっぷり」をどんどん重ねてくる怒涛のヘイトマシーン

基本的に他人(男)へ依存し自分の真ん中のものが無いような人間。

 

全員が思うわけです。

「じゃあなぜ陣治はこんな十和子と一緒にいるのか」と。

金とるわ浮気するわされてなお、なぜいつでも明るく振る舞い彼女を守ろうとするのか。

 

ラストでその理由がわかった時、共感度0すぎてこりゃ絶対泣かないわと思っていたはずなのに気づいたら自然と涙が溢れてしまいました。

似たようなテーマはあっても、こんなに感情を揺さぶられて引きずられまくる映画は人生で初めてかもしれません。

これは愛なのか。これが愛なのか。

こんなの見せられちゃったら、明日からどうしていきゃあいいのよ。

 

同じ様に多くの人に劇場で、胸を締め付けられるほど感情を揺さぶられてほしいなと思うのでした…!!

そしてあらゆるシーンにいろんな意味で「アアアァァァ〜!!」ってなればいいよ!

 

 

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最後の最後!

どうしてもラストについて書かずにはいられなかったので、最後にネタバレの感想を書かせてください。

まだ見ていない人はどうかどうかまた見てから来てくださると嬉しいです。

 

 

 

※以下ネタバレです!

 

 

 

 

 

十和子と陣治の関係

先述した、「陣治はなんでこんな女と一緒にいるんだ」という点について。

私はずっと十和子と陣治の力関係は、十和子が優っているものと思っていました。

もしかしたら凄い弱みを握られているとか、過去に返しきれないくらいの恩があるとか、絶対理由があるはずなんだと。

でも真実はそんな力関係とか利害とか遥かにぶっ飛んだところにあったのでした。

 

二人の関係は言わば「十和子の記憶という時限爆弾」付きの関係。

十和子が事件のことを思い出したら終わってしまうのです。

常に今日が「その日」になるかもしれないことを分かっているからこそ、陣治にとってはどんなに質素でしんどい生活もかけがえない「夢みたい」なもの。

罵倒されようが拒絶されようが、それこそが十和子が事件を忘れている証拠だなんて。

そして常に側にいることで2度と事件を繰り返させず十和子の記憶を刺激しないように守っているなんて。

そんなこと思いながら笑ってる陣治の顔を思い出すと… 

「夢みたい」という言葉も、本来あの事件の日で壊されてしまったはずの日常が奇跡的に延期されているだけの“なかったはずのもの”という意味なのかなと思うと切ない。

 

初めからずっと気になっていた二人の馴れ初めもグッと来ました。

陣治が一目で十和子に惚れたのは、水島がベッドでペラペラ語ったような「(十和子の)孤独に似たようなものを感じた」からなのかもしれないけれど、結局ずっと救われていたのは十和子だったんだなって。

 

劇中とにかく男と寝まくる十和子だけれど、唯一体を合わせなかったのが陣治なんですよね。辛うじてあったシーンも陣治→十和子のみ。陣治はひたすらに見返りを求めないのです。

だからこそ、陣治の十和子への思いは「愛」と呼べるものなんだろうなと思います。

「しめたと思った。神様、ありがとうと思った」という言葉と、回想での血のついた服を洗いながら泣くように笑う心から滲み出たような安堵を噛みしめる陣治が忘れられない。 

 

タイトルの意味にも繋がるのですが、十和子がこれまでの陣治から受けたものが「愛」という名のものだったと知った後、幸せを見つけられる日がくることを祈ります。

 

 

 

彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)

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映画「彼女がその名を知らない鳥たち」オリジナル・サウンドトラック

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