「ぼくは毎日"なにもしない"をしているよ」
プー太郎でしょうか、いいえ。クマのプーです。
9月14日公開の映画『プーと大人になった僕』(原作『Christopher Robin』)観てきました。
まず一言、すごく良かった…。
鑑賞後「すごく良かった…良かった…」を繰り返し唱えていた度で言うと今年ナンバーワンの映画かもしれない。
以下感想です。
基本ネタバレはなしのつもりですが、作中セリフなどに触れているので気になる方は鑑賞後にお読みくださいっ。
『プーと大人になった僕』とは
物語は、ぬいぐるみで親友のくまのプー達と100エーカーの森で楽しい日々を過ごしていた少年クリストファー・ロビンがロンドンの寄宿学校へ入学する為、プー達とお別れする所から始まります。
厳しい寄宿学校での生活、父の死、結婚、第二次世界大戦への出兵を経てすっかり大人になり、プーの事も忘れ仕事に明け暮れる日々を送るクリストファー。
一方、プーは100エーカーの森でクリストファーを待ちながら仲間達と過ごしていたが、ある日森から仲間達が消えてしまったことに気づきます。
仲間を探すため、昔クリストファーが行き来していた扉を開けてみるプー。するとそこはロンドンに繋がっていたのでした。
プーとクリストファーがお別れをするA・A・ミルンによる原作『プー横丁にたった家』のその後の物語。
『プーと大人になった僕』はそんな仕事に疲れ笑うことを忘れてしまったクリストファーが、プーと再会しプーの仲間達を探すためにロンドンとかつての場所を駆け回るお話です。
プーたちと「再会」できる喜び!
この映画の魅力としてやっぱり一番に挙げたくなるのは、キャラクター達との再会です。これはクリストファー・ロビンとプー達との再会でもあり、同じくかつて子供であった私とプー達との再会でもありました。
私にとって「くまのプーさん」は当たり前にように周りにいて、当たり前のように「好きだな〜」と思う存在でした。でもその当たり前はいつしか目まぐるしく現れる色々な新しいものに埋没していて…。
だから、スクリーンで動くプーの姿を観た瞬間から、胸がぎゅーーっと締め付けられるような愛おしさに襲われました。
ああ、私、プーさんのこと、大好きだった…!!
イーヨーもピグレットもティガーも大好きだった。みんなあの頃の友達だったなあと。
また今回のキャラクター達のなにが胸に刺さるって、あの使い古されたぬいぐるみ感。
初めに見たときに衝撃を受けたはずなのに…もうたまんない。
今まで私にとってのプーさんはザ☆黄色であったのに、このプーに出会ってしまった今、もう戻れないなと思ってしまうほど愛おしくて。
クタクタのぬいぐるみプーが、忠犬ハチ公のように100エーカーの森でクリストファーを待つ健気さ…はあ…
何より中年男性がそんなぬいぐるみと共にいるという図はそれだけで良いものがあります。
このプーを生み出してくれてありがとうと言いたい。
イーヨーのキャラ立ちが半端ない
もちろん素晴らしいのはプーだけじゃない!
ピグレット、イーヨー、ティガーやカンガとルー、オウルにラビットとお馴染みのキャラクター達が勢揃いするのですが、まあ全員いいキャラしてる!
もう本当楽しいの!!
ピグレットのヘイトを集めがちな弱気なところも、ティガーのシッポで物事動かしてる感もそのまんま…!ああ楽しい。ずっと見ていたい。
これがプーさん初見だという人でもあっという間にキャラクターがわかってしまうような作りはさすがだなと思いました。
そんな中でも特に最高だったのがイーヨー。
彼のこっちがびっくりするほどの悲観的なセリフの数々は、作中の最高のスパイスになっていて彼が喋るたびにンフッと笑ってしまう自分がいました。
そして今回クリストファー・ロビンがイーヨーを抱えながら駆け回るシーンがあるのですが、地面に降ろされるたびに足元がクタッとふにゅっとして「こいつやる気ねえな」というのが丸わかりなのがたまらなかった〜〜
そして相変わらずシッポが取れてしまうイーヨー。
今年のアカデミー助演ぬいぐるみ賞はイーヨーに決定です。
プー達と人間のぶらり電車でロンドン旅
ほっこり温かいだけじゃないワクワク感を作っているのは、この「ぬいぐるみと人間の冒険」というおかしさ。
この映画では大人になったクリストファーの冒険と、その娘マデリンの冒険という2つのストーリーがあるのですが、どちらもとても楽しい…!
ユアン・マクレガーがぬいぐるみ(+風船)を抱きかかえて街を駆け回るってだけで違和感と尊さでいっぱいだし、可愛い少女マデリンが体いっぱいにぬいぐるみたちを抱きかかえるのも愛おしい…!
しかしいくら見た目はぬいぐるみでも、大人しくしていられないのがあの子達。
思わず喋ってしまう周りの反応や、逆に馴染んでる姿などなど、どのシーンを切り取っても思わずため息がつくような魔法のような時間を見ている気分になります。
それにしてもさすが魔法の国、ファンタジーの国。
『パディントン』『ピーターラビット』といい、イギリスの作品は「人間ではないもの」を受け入れ友達とする楽しい作品で溢れているな〜としみじみ。
プーの言葉が心に響く理由
今回一番心に刺さったというか思わず「うわ〜〜〜」と思ったのは、プーの言葉の数々に関してです。
「僕の好きなことは、なにもしないこと」
「なにもしないって最高の何かに繋がるんだ」
くまのプーさんといえば「なにもしないをしているんだ」という名言の持ち主。
私はずっとこの言葉をプーさんの言葉として何も考えずに生きてきたのですが、そうかと。
これ、全部子供の頃のクリストファー・ロビンの言葉なんだ。
作中、とにかく仕事に追われピリピリムードのクリストファーに対し、昔と変わらないペースでいるプーは何気ない言葉でときに彼を余計にイライラさせたり、ときに心を溶かしたりしていきます。
でもその言葉たちが全然説教くさくないの。
というか作品自体が説教くさかったり、いやらしくない。
それはこれらの言葉がプーにとっては当たり前の言葉であって、「昔の心を忘れちまったクリストファーにちょいと一言響く言葉を言ってやるか」ってものでは一切ないから…!全て、会話の中で溢れるものであるからだと思うのです。
そして何より、クリストファー自身の言葉だから。
父の死後家族を支えなきゃ、戦争で国のために戦わなきゃ、会社のため・家族のために働かなくちゃ。
「なにもしない」ことができなくなり、自分のための時間を過ごさなくなったクリストファー。
この物語は、そんな大人になったクリストファーが、「かつての親友プーと再会」するだけでなく、プーを通して「かつての自分と再会」するお話でもあるんだなあ…。
プーの言葉は何もかも愛おしいんですが、中でも一番好きなのはあの赤い風船に出会った時のやりとり。
プー「風船、欲しいな」
クリストファー「必要ないだろ」
プー「必要ないけど、欲しいんだ」
あああああああ…!!!ああああああッ…!!!!!!
そうだよねそうだよね必要ないけどそうなんだよね…!!!!!
かつてクリストファーとプーたちの使っていた間違った言葉たちが、時を経て娘マデリンと合言葉のような使われ方として活躍する展開にもすごくグッときました。
終わりに
前述したように「超いい泣ける映画ですよ〜〜」という雰囲気をグイグイには感じない。のに、鑑賞後に自分の頬を触って、こんなに泣いてたの!?って驚くくらい泣いてしまったようでした。
今思い出しても、愛おしくて仕方ないシーンがたくさんある。
愛おしいって何回言うんだって感じですがそれしか言いようがないの。
「なにもしない」という世界一大切な時間を、私の心の中のプーたちを、大切にして生きたいなと思うのでした。
とりあえず今は、『プーと大人になった僕』バージョンのプーたちが欲しくてたまらないです。はよ、はよ…!
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