先日、ようやくようやく『ブリグズビー・ベア』観てきました。
同じく話題になっている『カメラを止めるな!』と連続で…!
『ブリグズビーベア』と『カメラを止めるな!』を連続でようやく観てきたぞ!
— にのうでプニ子 (@ninoude_punico) July 31, 2018
両極にありそうなのに同じものを感じた…!この2作品が同時期に公開されているって、なんかすごく奇跡だ…!! pic.twitter.com/DBZ7l5Z5qH
この両作品はともに口コミで広まり話題となっていったのですが、特に映像・作家陣などクリエイターの方が絶賛しているなあと感じていてすごく気になっていたのですが…
観てみてその理由がわかりました。
どちらも、底から湧き上がるようなクリエイター魂をビンビン感じる…!!
そんな訳で今回はまず『ブリグズビー・ベア』について書こうと思います。
あらすじ
25歳の主人公のジェームズは小さなシェルターのような家で両親と3人で暮らしている。
外の世界は危険だと外出を禁止されているジェームズの唯一の楽しみは、『ブリグズビー・ベア』というクマの着ぐるみが活躍する教育番組。
しかしある日突然家にやってきた警察によって衝撃の真実を教えられます。
-彼らは偽の両親で赤ん坊のジェームズを誘拐したこと。
-そして『ブリグズビー・ベア』は偽の両親が作ったもので、外の世界には存在しないこと。
実の両親と妹のいる家で暮らすことになるジェームズ。
新しい環境で人と出会い様々な情報と出会う中、それでもただ忘れられないのはもう観られない『ブリグズビー・ベア』のこと。
そしてジェームズは心に決めるのだ。
「『ブリグズビー・ベア』の新作は僕が作る!!」
以下ネタバレです。
設定が神がかっている!
もちろん『ブリグズビー・ベア』に関して。
誘拐された主人公が25年間、クマの着ぐるみの変ちくりんな教育番組だけを観続けていたというだけでも十分キャッチーでなんだこりゃなんですが、
更に凄いのはその教育番組を誘拐犯である父が手作りしているということ。
クレイジーすぎるよ…!!
仕事と言い外へ出ていき撮影をこなし、毎週ビデオテープで『ブリグズビー・ベア』の新作を届けるという根性。
そして『ブリグズビー・ベア』本編で活躍する父親の意気揚々とした姿、何より猛烈に凝った世界観…!
(時に唐突に出てくる数式の勉強や性の知識などが最高)
たった一人の視聴者のために、ここまで力を注げることってある…?
偽の両親といた頃のジェームズの立場は、外からみると「監禁」である。
でもジェームズがそれを一切疑わないのは、全て『ブリグズビー・ベア』があるから。
毎週届く『ブリグズビー・ベア』は世界と繋がっている証拠で、世界中に同じようなファンがいると思い続けるジェームズ。
ああ、これだけでご飯が食べられそうなくらいの最高の設定なんじゃ。
ジェームズの部屋も凄いんですよね…
ベッドから服装から家電?まで全てブリグズビーベアグッズまみれ。
これも偽の両親の全部手作りなのかと思うと圧倒されてしまう。
ジェームズは悲しい被害者なのか
誘拐・監禁ものでまず思い出すのは映画『ルーム』。
こちらは監禁された親子が命がけで脱走し、外の世界とのギャップや周りからの目に苦しみながらも順応していこうとする姿が描かれていて、観ていると「すごくリアルだ」なんて感じて。
しかし一方で、ジェームズはちょっと違う。
めっちゃ順応してる。
初めてパトカーで偽の両親以外の人間に会い、自ら話しかけた第一声の声のしっかり加減から若干の違和感を覚えたのですが、ジェームズにはなんだろう。語弊がありそうだけれど、被害者感があまりない。
映画を観に行けば周りと同じようにポップコーンを食べて大笑いし、妹のパーティーに行けば自分から若者たちに声をかけていく。
25年間共に過ごした偽の両親のことも「昔の両親」とサラッと言うんですよね。
めっちゃ順応しているように見えるのだ。
ただジェームズが他の人と違うのは”『ブリグズビー・ベア』を知っているか/知らないか”ということ。
そしてジェームズが唯一抵抗するのが、『ブリグズビー・ベア』の新作がもう観られないという事実である。
誘拐というハードルと止められない「好き」の気持ち
このジェームズの不思議さはなんなんだろう…観ながらずっと考えていました。
もしかしたらこの映画にとっての誘拐という事件と『ブリグズビー・ベア』とは、一種のハードルなんじゃないかな…?
前述の通り、ジェームズにとって最も辛いことは『ブリグズビー・ベア』の新作がもう観られないということ。
だからこそジェームズは自ら『ブリグズビー・ベア』の映画を撮る決意をします。
そこからのジェームズの意気揚々とした姿には、観ている方もワクワクし自然と応援してしまって凄く良いシーンなのですが…
いやいやいや、本当にそれでいいのか…!?だって自分を誘拐した人間の作った作品だよ…?
ある意味自分を洗脳してきた作品だよ…?!
そこから離れなくていいの…?!?!
この映画は基本ジェームズの視点に立って描かれており、また前述の通りジェームズの明るさや順応力のおかげで「誘拐とその被害者」という重く捉えるべきはずのテーマが置き去りになっています。
真の両親からしたら、1秒でも早くそんなクソみたいな記憶忘れてほしいし、ブリグズビーベアのTシャツをきてその世界の話を意気揚々とする息子の姿は見たくないに決まってる。
そこを考えると実はとてもとてもハードだなと思うのです。
でも、そのハードさが全然前面に出てこないのは何故…?
それは、そうした事実が一種のハードルをあげるアイテムとして使われているからなんじゃないでしょうか。
人に共感されないものを好きでいること。
共感されないだけでなく、猛烈に反対されるほどのこと。
それほどのハードルを持ってしても「俺はこれが好きなんだ!!作るんだ!!」と言って行動に移していくことで、ジェームズの莫大な『ブリグズビー・ベア』愛を表しているんだと思うのです。
ジェームズの突っ走り方で超絶印象的だったのは、終盤に刑務所で偽の父と話をするシーン。
「お願いしたことがあるんだ」というジェームズに、偽父は「なぜ誘拐したのか聞きたいんだろう…?」と昔話を語り出します。
観客も気になって仕方なかった真相…!一体どんな訳で教育番組なんか作ってたの…?!
しかし少し聞いてジェームズは衝撃の一言を放ちます。
「あ、聞きたいのはそれじゃない」
そして録音機と台本を取り出し、新作のアフレコをさせるのだった。
そう。ジェームズには誘拐の真相など二の次なのだ。
でもこのシーンこそ、この映画がよく現れているシーンなんじゃないかなと。
この映画は、誘拐された青年が新しい世界で生きていく話ではなく、重度のオタクが自分の好きなものに突っ走る話なんだと思いました。
ダサさと若者の行動力と
この映画の見所の一つに、映画を作る上で協力してくれる人たちの姿があると思います。
中でも妹オーブリーと、その友人スペンサーの存在…!
世間を何も知らないジェームズが作る『ブリグズビー・ベア』は彼ら若者たち無しには決して完成しなかったはず。
『ブリグズビー・ベア』はビデオテープという今や滅びた文明に保存されており、非常に閉ざされた存在。
でも映画作りに関心のあるイケイケのデジタル世代スペンサーはそれをいとも簡単にデータ化し、YouTubeにアップしちゃうのだ。
そしてその動画はダサさを超え「逆にイケてる・逆に新しい」と若者に受け入れらられ広がっていく。
この流れがすごく面白いなと思いました。
多分、スペンサー達があと数年先の世代だったら出来ないんじゃないかなと。
それこそ私だったら出来ない。
少しでも「これアップして良いのかな…」と考えてしまったら終わりというか、動画をあげることや世界に発信することに抵抗がなく、むしろ「面白い!だから見て!」という一心で積極的に動ける彼らだからこそで。
ダサさと、それにマッチした若者のまっすぐな行動力によってジェームズの思いが実現していく様は、見ていて本当に気持ちよかった!
まとめ
映画を観る前に何度か目にした「心が温まる・癒される」という感想。
登場人物の善人さ、ジェームズの笑顔、コミカルさ…もちろんそれらに癒され心も温まる優しい映画ではあるのですが、それだけじゃなくて。
見終わった直後は「大感激!!」という感じでもなかったはずなのに、気づいたらずっと『ブリグズビー・ベア』のことを考え思いに耽っている自分がいました。
ジェームズ役のカイル・ムーニーはもちろん、偽の父親役のマーク・ハミルの意味ありげ感や、警察官役のグレッグ・キニアの溢れる良い人さも最高だった!
かなりのネタバレをしているので、この記事を見てくれた方は鑑賞後の方だとは思うのですがもしまだの方もまだギリギリ公開中!ぜひ劇場に走って見て欲しいです。
ああ、ブリグズビーベアTシャツ、私も欲しい。
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