以前同じくデミアン・チャゼル監督の作品『セッション』を観た際にこんな風に記事を書きました。
この映画に関して博識ぶって音楽の観点からとか賞がどうとか解説するのは無謀な気がしたので見ていない人には「見ろや」としか言えません。 演劇を見たときに飛び散ってくる役者の唾や汗や会場の熱気のようなものです。 ブロガー失格!?うっせー! おとといきやがれホモ野郎!!!!
『セッション』感想 感じろ!感情を超えたイカれた野郎のwhiplashを! - 毒にも薬にもならないブログ
『ラ・ラ・ランド』も、全く同じ。
華やかな映像美、感情豊かな音楽、それだけじゃない。
実際にこの作品を2時間観た人にしか体験できない映画体験が待っていました。
先入観を持って欲しくなくて、あまり映画の感想で泣いたと言いたくないのですが。
ごめんなさい、私はビビるくらいビッシャビシャ泣きました。
みんな、見ろ!
あらすじ
夢を叶えたい人々が集まる街、ロサンゼルス。映画スタジオのカフェで働くミアは女優を目指していたが、何度オーディションを受けても落ちてばかり。ある日、ミアは場末の店で、あるピアニストの演奏に魅せられる。彼の名はセブ(セバスチャン)、いつか自分の店を持ち、大好きなジャズを思う存分演奏したいと願っていた。やがて二人は恋におち、互いの夢を応援し合う。しかし、セブが店の資金作りのために入ったバンドが成功したことから、二人の心はすれ違いはじめる……。
美しいミュージカル、でもそれだけじゃない。
『ラ・ラ・ランド』の予告を目にした時、なんと華やかで楽しそうなミュージカル映画なんだと胸が高まったのを覚えています。
というかこんな予告見たら誰もがハッピーになるはず。最高だもん。
同じミュージカルという点で連想したのは『マンマ・ミーア』だったり『ヘアスプレー』でした。
でも、この映画には表に見える華やかさや笑顔と同時に漂っている何かを感じたのです。
それは、たぶん切なさとか虚しさ、儚さのようなもの。
一度でも何かを夢見た人になら絶対にわかる気持ちがこの映画にはありました。
夢を追う、ということ
女優を夢見てオーディションを受け続けるミアとジャズの復活を目指し自分の店を持つことを夢見るセブ。
この映画はそんな二人のラブストーリーでもあるのですが、ツタヤで「ラブストーリー」枠に入っていたら「は?」と言いたくなるくらい、それだけじゃなくて。
夢を追う二人の人間の物語という印象の方が強くありました。
完璧でなく太陽のもとにいたわけでもない二人の大人の、物凄く痛々しくて苦い姿がリアルに描かれているのです。
表面的には華やかなミュージカル。
でも、主人公たちの内側に見える葛藤や不安が分かるから、物凄く切ない。
そこの表裏一体性が、今を生きるギリギリの緊張感が、とってもとっても美しい。
なんかもう、とんでもないのですよ。
自分の夢を追い続けるということはキラキラしたものだけじゃなくて、大人になればなるほど「どこで諦めるか」「どこで妥協するか」という自分の現実との戦いでもあって。
監督のデミアン・チャゼル氏自信が夢を追うということが何なのか、叶えるとはどういうことなのかをよく知っているからこそ作れたものなんだと思えます。
クリエイティビティの塊
演出を見ているという感覚
作品全体、1秒残らず使い切ろうという監督をはじめとするクリエイターたちの情熱をものすっごく感じました。
それは音楽や衣装や舞台や役者の表情や、レトロを意識した編集やカメラワークや至る所で。この映画全てで。
ものづくりの原動力って、「自分にしかできないものを表現したい」という気持ちだと思っているのですが、この映画はそういう「うわああああああああああ!!!!俺はこれがしたいんじゃあああああああ!!!!」というクリエイターたる意志がバッシバシで。
もう圧倒されて息ができなくなるくらい、意志に溢れてる。
こんな私が言えることではないのは百も承知の助で言いますが、物凄く嫉妬しました。
こんな作品を世に生み出して残して死ねる人生が本当に羨ましい。
こんなに細部まで命の吹き込んである映画ってなかなか出会えないよ。
「監督デミアン・チャゼル」の文字を見たら、次回も確実に観に行きたいと思うんだろうな。そう思うくらい演出の存在感が強かったです。
エマ・ストーン史上最高
ミアを演じるエマ・ストーンが本当に素晴らしかった!
『アメイジング・スパイダーマン』や『ラブアゲイン』を初め彼女の演技は結構な数を見てきたつもりだけど、ここまで「演技がすごい」と思ったのは初めてかも知れない…。
『バードマン』を観たときも思ったのですが、なんかね、彼女の演技って「人間」感がすごいんですよね。確かにそこにミアが存在しているような生々しさというか…。
歌が上手いだけだったり綺麗なところだけを演じられる女優さんならミアはできなかったと思う。
個人的に役所へ共感する点がありすぎて、ミアの一生懸命さにひたすらに胸を打たれてしまってミアの演技にボロボロ泣かされました。
分かるんです、期待を持ってしまう気持ちが。
恥をかいて諦めたくなる自分への悔しさが。
映画が終わってしばらく経ってからもいろんなシーンのエマ・ストーンの表情を思い出すだけで涙が溢れてきて困った、ちなみに書いている今も泣いているよ。
IMAXレポート
ミュージカルということと、IMAX限定ポスター目当てで今回もIMAXで観てきました。
当然ながら音響は最高。
ジャズミュージック特有のピアノだったりトランペットだったりドラムだったりの表情が非常に豊かだからこそ、臨場感が際立って活かされていたように思います。
映像としては、映画自体衣装も舞台もものすっごく綺麗なんだけど、そもそも映像にレトロな雰囲気を出してあるのでIMAX特有の透明感みたいなものはあまり感じられないかなと思います…。
今後『ラ・ラ・ランド』を見るときには立川みたいに音響に力を入れている劇場であればいろんなところに通って見たいなー。
ポスターはB3サイズの両面刷り!
質感はマットでオシャンティ。
裏目には『CITY OF STARS』の譜面が載っています。
どっち側で飾るか悩みどころですな。
以下ネタバレです。
まだ観ていないという方は絶対にみないでおいてね。
そして早く映画を観てきてくれ!
『ラ・ラ・ランド』の音楽
渋滞のシーン
予告時点で「なんじゃこれ!!!」という猛烈なインパクトを残していた、渋滞した高速道路の車の周りで、車の上で歌い踊るこのシーン。
圧巻…!!!!
こんなん…アツすぎぃい…!!
フラッシュオブなんかもそうだけど、タダでさえ大人数が歌って踊る様というのは心に訴えてくるものが大きくて圧倒されるというのに…本当ずるい。
映画の導入としてまず盛り上げるために入れたのかなとか思っていると、歌詞をみて「ああ」と気づくわけです。
そうだ、この人たち全員夢を追っている人なんだ。
渋滞というのはL.A.で夢を追っている人の集まりなんだ、と。
そんな夢を追う男女が各々に見せ場を作り自分たちをアピールしていくんですよね。
その一人一人の表情の輝きが、凄まじい。
一瞬一瞬、確実にだれもが主役になっている、その連鎖。
盛り上がり方とか、一瞬の煌めきとかを見ていると、表現者のなんたるかをビシバシ感じます。
その「渋滞」の中にミアとセブが並んでいる。
導入として完璧すぎるだろ。
でも5年後のシーンでは、ミアとセブは「渋滞」を抜けていくですよね。
その意味がわかったとき、ハッとするものがありました。
あとはもう単純に、大勢が同じ意志を持って作品を作り上げようとして、結果完璧なものを観せてくれているという熱量に感動しました。
高速の後ろの後ろまで、全員がプロフェッショナル!!
このシーンを見るためだけにお金払えます。
『another day of sun』って題名もたまらないものがある…!
ミアのオーディション
このソロ曲に心を揺さぶられないわけない。
ミュージカルに対して、なぜ突然歌いだすのかわからないという意見を聞いたりします。
でもここのシーンを見たらそんな気持ちも吹き飛ぶんじゃないでしょうか。
ミュージカルじゃないと出来ない感情表現。
おばとの思い出、女優になった理由、不安、期待。
そういうものを言葉で語るだけじゃ、この映画がこんなにも人に響くものにはならなかったと思うのです。
このシーンのこの曲、ミアの歌声だからこそ、伝わるものがあるのです。
『セッション』と真逆のジャズ
『セッション』で衝撃だったのが、ジャズをメインにしてるにも関わらず「音楽の楽しさ」を全く表現していない点だったのですが、『ラ・ラ・ランド』は真逆で、ジャズの魅力を全力でぶつけてきてくれました。
ミアが彼と彼の兄カップルとの退屈な食事を抜け出すシーン、めっちゃよかった…!
セブに対し「ジャズ嫌いなんだよね」「食事のBMGでしかなくない?誰も聞いてなくない?」と言い放っていたミアだけど、彼女を日常から救い出してくれたのがジャズ(=セブ)というのが最高にドラマチックでした。
ジャズはこの映画において観客を夢の世界に引き込んでくれる案内役だったように思います。
匂いや音は記憶に強く繋がるというけれど、5年間もこの先の人生もミアは街でジャズを耳にする度に二人でいたことを思い出すんだろうな。
ラストシーン
2時間全てはこの瞬間のためにあったんだなと。
『セッション』と同じでセリフのないパントマイム法が使われる完全な二人だけの世界。
当たり前なんですがあのシーンだけを観ても何も思わなくって、2時間観てきたからこそ、ずっと保ち続けて持ち上げ続けられてきた熱量がマックスに到達するのであって。
持っていきかたがすごいとしか言えない。
レストランでセブが解雇された後にミアとキスするシーン、あれって予告を見ていると二人が結ばれたシーンだと思うんですよね。
でも実際最初に観客が見るのは、解雇されたセブがミアを無視するどころが八つ当たりしていくという最悪のシーンで、予想を裏切られた観客は早い時点で「あれ?!」と混乱します。
あのシーンはどこだったの?と。
それが、ラストになって二人の夢の世界が始まった瞬間に分かる。
ああ、あの私たちが観られると思ってきた最高にロマンチックな完璧なラブストーリーは現実ではなかったんだと。
これが現実として観られることは、叶わないんだと、突きつけられるのです。
ラストシーンは2時間観てきた中で、一番キラッキラしているんですよね。
ミアもセブも夢という「縛り」から解放され「二人という夢」を叶えている世界の中で踊り笑いキスをする二人は最高にキラッキラしていて。
ずっと作品にかすかに漂い続けていた負のオーラがあのシーンにはない。
叶わなかった世界だって知っているからこそ、夢のように最高に美しく見えるんだと思うんです。
それが、物凄く切ないんです。
でも一方で、あれは二人の中では現実でもあったんだと最後の二人の目を見ると思います。
あの瞬間二人の中には確かに存在していて、だからこそこの先を生きていけるのかもしれない。
「一生愛してるわ」というミアの言葉が今一度胸に刺さります。
二人という季節
SAKEROCKのアルバムに「SAKEROCKの季節」というタイトルがあります。
リーダーの星野源が解散の決まった同バンドのことを「人生の中の季節だった」「これから先もずっと思いだすものだ」ということを言っていたのが印象的だったのですが、『La La Land』を観ていてその言葉を思い出しました。
冬春夏秋と展開する二人の物語。
後に別々の道を行く二人だけれど、確かにあの時には二人の季節があったんだなぁと。
それって、とても美しいなと感じました。
まとめ
正直、観終わった後の数時間は感情を揺さぶられすぎてまともに感想を持てないくらいダメージを受けました。
でも、また観に行きます。
またどうしようもなく死にたくなるだろうけど、観たいのです。
夢を見るってそういうことですよね、きっと。(適当)
The End!
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